工房ベル

2026/05/31 07:00


久しぶりに高校の同級生から連絡がきた。
卒業して15年近く。今ではSNSの投稿に、いいねをするくらいの関係性。
「お箸は作ってない?」
木婚式(結婚5年目)にお箸を新しくしたい。
本当は手づくりしたかったけれど、子どもが小さくて諦めていた…と。

普段、箸は作っていない。
作っているのはネクタイピンなどのメンズアクセサリー。
でも、せっかく相談してくれたので作れるよと返事をする。
8角形で、使う木はメープルか山桜かな…
頭の中でぼんやりと完成のイメージが膨らんでいく。

メープルを使うことに決めた。
何となく、メープルの淡い白が彼女のイメージに合っている気がした。
花言葉のように、木にも木言葉がある。
メープルの木言葉は「大切な思い出」や「美しい変化」。
子どもが生まれれば、生活は目まぐるしく変化する。
その変化を楽しんで、大切な思い出になるように。
そんな想いも込めて。



約12mmに荒く切り出した角材から鉋(かんな)を使って箸の形にしていく。
木目の流れを確認しながら鉋を引く。
メープルのほんのり甘い香りが漂う。
ザラザラとくすんでいた木肌が滑らかにツヤを取り戻していく。

まずは10mmの角材に。
片方の先を細くし、4角形の端の形に。
4角形の角を削り、8角形に。

1度に削る量は0.1mmにも満たない。
ひとつの面を削っては、目で見て、指で触って確かめる。
くるっと回して別の面を削る。
8つの面が均等になるように。
納得のいく形になるように。
何度も何度も鉋を引く。
シュッ。シュッ。
静かな部屋の中に木を削る音が響く。
一方で頭の中は騒がしい。
こうしたら喜んでもらえるかも…
いや、これで喜んでもらえるのか…
期待と不安が入り混じる。
完成させても無くならない。
気付けば作業台の周りには、綿のような鉋くずが散らばっていた。



完成した夫婦箸は、宅配便で彼女の元へ。
後日、彼女のSNSで木婚式の投稿を見てホッとする。
無事に届いて、喜んでもらえたんだなと。
そっとハートマークを赤く染める。





お子さんがもうすぐ1歳になるので、ベビースプーンを一緒にお祝いとして作りました。

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